書籍(平尾和雄著「ヒマラヤ今昔物語」)のご紹介
『ヒマラヤ今昔物語』
平尾和雄
わたしが初めてネパールを訪れたのはいまから50年あまり前の1972年春、25歳のときでした。ダウラギリとアンナプルナ。二つの8000メートル峰にはさまれて流れるカリガンダキの川底の村、タトパニでスルジェという名の女性がいとなむ茶店に荷を下ろしたわたしは、そのまま沈没して結婚。半年後にはトレッカー宿を開くことになります。80年代にはポカラのペワ湖畔に場所を移して宿を続けますが、スルジェの癌治療のために87年に帰国。99年にスルジェは日本で他界します。
スルジェとの死別後四半世紀あまりの歳月が流れていますが、昨年末に『ヒマラヤ今昔物語』(阿佐ヶ谷書院刊、1870円)を上梓しました。これまでのノンフィクション作品とは違って本作は「今昔物語」などの古典や日本のむかし話、泉鏡花など明治以降の文豪の怪奇譚のプロットを借用して組合せ、50年ほど前のヒマラヤの山村に舞台を移しておとぎ話風に仕立てた架空の物語です。昔のネパールを知る人やネパールに興味のある人だけでなく、ネパールを知らない人にも楽しめる内容になっています。