最近のネパール政治情勢(2024年5月)
2022年12月26日に5党(公認政党は7党)により、ダハール・ネパール共産党(マオイスト・センター)党首を首相とする連立政権に合意され、翌23年1月に下院の承認を経てダハール政権が発足した。しかし、中道右派と左派との幅広い連立は、市場経済と社会主義的な経済や経済成長と社会開発のバランスという基本思想上の相違から長くは続かなかった。
現実的にはネパール経済は海外送金と観光に依存している一方、2024年の失業率は19.7% と予想されており、また国外出国者が1日2,500人内外(年間8~9万人)に達すると伝えられている。このような経済情勢が各党下部組織において、財政政策や経済社会政策において意見の対立をうみ、連邦議会選挙(2027年)に向けての懸念や対立の要因になっている。
共産党マオイスト派を率いるダハール首相は、水面下でコングレス党デウーバ前首相と次期連邦議会選挙前での連立継続を模索すると共に、財政政策(マハット財務相)などへの不満を表明していたが、了解は得られなかったと見られる。これと平行して共産党UMLオリ元首相との連携を模索し、これを前提として3月初旬、全閣僚の入れ替えを明らかにした。これにより、2つの小政党を加え共産党マオイスト派と共産党UMLとの左派連立が成立し、コングレス党は野党に転じた。
一説によると中国が左派連合の結成を促したとも伝えられるが、そう簡単に第三国の影響により一国の政治を変えられるものでもない。どの政権もインドと中国との関係のバランスを考慮せざるを得ない。しかし、インドとの関係を重視するコングレス党が野党に転じ、親中派と言われるオリ元首相が率いるUMLが与党に加わったことにより、中国の「一帯一路」拡大政策が進めやすくなった反面、「自由で開かれたインド太平洋」政策を進めている米国、インド等の活動が後退する可能性も懸念され、地政学的な動向や経済財政政策における重点シフトなどが予想されている。2027年の連邦議会選挙への影響を含め、今後の動向が注目される。(2024.6.7. M.K.)