2023/01/18(水)

2023年を迎えての会長メッセージ

2023年を迎えての会長メッセージ

年末、年始の行動制限が解かれ、久し振りに開放的な新年を迎えられた方が多かったのではないでしょうか。2023年、新型コロナウイルスが国際感染症(パンデミック)として世界に蔓延し社会経済活動や文化活動そして国際交流など社会全般の活動に大きな制約となって3年を迎えました。このウイルスは変異を重ねながら広がるため、まだまだ尾を引く可能性がありますが、予防に留意しつつ、皆様にとってより健康で活力ある年となることを期待しております。

他方、中国で感染が終息しておらず、また米国で変異株が検出されているなど、入国時の検疫・制限が各国それぞれの状況に応じ実施される可能性がありますので、国際交流面等では制約が継続すると思われます。

(1)ネパールでの連邦議会選挙の実施と新政権の発足

ネパールにおきましては、2022年11月20日に連邦共和国憲法の下での2回目の議会選挙が実施され、幾つかのトラブルが報告されているものの、投票率は61.4%で前回の68%強には及びませんでしたが、全体として平穏裏に実施され6割を越える投票率となったことは民主憲法の定着の上で歓迎されるところです。

連邦議会選挙は、ドウーバ首相(選挙当時、コングレス党)と連立を組んでいた共産党マオイストセンターのダハール代表他3党のグループとオリ元首相(共産党CPN-UML)グループとの対決の形で進められ、いずれの党も過半数の138議席には達せず、連立が模索されました。主要政党では、ドウーバ代表のコングレス党(NC)が89議席、オリ元首相が率いるネパール共産党(CPN-UML)が78議席、次いでダハール代表のネパール共産党(マオイストセンター)が32議席獲得し、NCが第一党となりました。しかしダハール代表が選挙前に連立を組んでいたドウーバ首相(NC)に首相の座を譲るよう要請したが拒否されたため、ダハール代表は第二党のオリ元首相とよりを戻し、オリ元首相側に大統領ポスト他を譲り、自らが首相の座につくこと(2年半とされる)で合意したと伝えられています。ダハール代表は、2022年12月26日にバンダリ大統領の下で宣誓し、2023年1月からの連邦議会で承認される見通しです。同国の今後の安定が期待されるところです。

(2)世界情勢―ポスト冷戦時代の終焉とグローバリゼーションの後退―

目を世界に転じますと、2022年2月24日のロシアのウクライナ侵攻によりポスト東西冷戦の時代は終了したとされ、グローバリゼーションの流れは後退しています。本来ウクライナ問題は旧ソ連邦が崩壊しそれぞれ独立したロシアとウクライナの2国間問題なのでしょうが、米国を含む北大西洋条約機構(NATO)諸国が広範な経済制裁を実施すると共に、軍隊は派遣していないものの、大量の兵器を提供するなどウクライナ支援を行っていることから、NATOの東方拡大に反発するロシア対NATOという冷戦時代の構図に戻っています。NATOにはソ連邦崩壊後多くの東欧諸国が加盟し16か国から現在30か国に拡大しています。更に米国等がミサイルや戦車をウクライナに提供することになっていることから、戦闘は激化する可能性があります。新冷戦となるか、それともNATOとロシアなど関連諸国が英知を結集してそれを避けることが出来るのかが注目されるところです。

また米中間の経済交流制限に加え、政治面でも中国の「一帯一路」政策が海路を含めアジアから欧州への勢力圏拡大に繋がるものとして日本始め欧米諸国に懸念されており、中国との関係においても制約要因が強くなっています。もしロシアを更に追い込み中国に接近させることになれば新冷戦時代を迎える恐れがあります。

グローバリゼーションについては進展して行くことが望まれるところですが、上記の政治・経済上の制約に加え、国際感染症新型コロナウイルスは収束しておらず、残念ながら当面国際交流は抑制されることになりそうです。その中で中国ではコロナ・ゼロを目標とする隔離政策に学生等多くの国民が白紙の紙を掲げて無言の抗議(白紙革命)をしたことから、いわば欧米諸国に見習った形でゼロ・コロナ政策を解除し、また1月下旬の春節を前にして海外渡航を緩和したことから多くの中国人他が海外渡航するようになり、日本を含め一部欧州諸国が中国からの旅客の検疫を強化しており、今後の動向に注意する必要があります。

コロナ禍での3年間、日常的な学園生活を送ることが出来なかったり就職に苦労された学生や、対面が必要な多くの事業関係者の皆さん、そして家庭内での生活が多くなった皆さんなど、ご苦労が多かったところです。また医療関係の皆さんや市民生活に近い市区町村等、多くの皆さんが予防や治療などに献身的に努力されていることは、感謝に堪えません。

対面事業を必要とする当協会も例外ではありません。しかし在日のネパール人も10万人を越え、多くの分野で活躍し定着しており、当協会の目的は達成されている感があります。

本年も多くの課題に取り組まなくてはなりませんが、互いに協力し合い、前に進まなくてはなりません。皆様のご理解、ご支援をお願い致しますと共に、皆様のご健勝とご多幸をお祈り致します。

               公益社団法人 日本ネパール協会

代表理事/会長 小嶋 光昭