2022年を迎えての会長メッセージ
2022年、コロナ禍での2回目の新年を迎えましたが、新型コロナウイルスの制約に負けず、より健康で幸多き年となることを期待しています。
新型コロナウイルスへの対応に関しては、1年9か月の経験と多くの方々のご努力により、検査の迅速化と感染者の早期発見、感染者の隔離と治療、ワクチンを含む個々人の予防策、及び入国者のチェック・制限という国際感染症への基本的対応が実施されるようになり、今後の社会生活を送る上で心にとめて置くべきことと思います。
今年中には、マスクのない生活が描けるようになることを願っています。しかし、新型コロナウイルスは次から次へと変異し、地球上から消えることなく何処かに潜んでおり、国際交流を進める上で何らかの制約要因になると思われます。これ以外にも、現在、国際交流、国際協調、東西冷戦構造崩壊以降のグローバリゼーションを制約する諸要因があります。
1、グローバリゼーションの制約要因
1990年代初頭、ソ連邦の崩壊・分裂により東西冷戦構造が終焉し、東西両陣営のそれぞれの中での国際協調や国際交流は、両陣営の壁を越えたグローバルな関係に移行し、物、資金、人と共に情報のグローバリゼーションが飛躍的に進展しました。
その中で、(1)麻薬や放射性物質などの禁輸品、(2)国際犯罪組織等による資金洗浄、及び(3)国際テロ組織については、これまでも自由な交流が制限されて来ました。資金洗浄については個人の金融取引について日常的な制約になっており、国際テロに関する交流の制約についても一般社会に様々な影響を与えています。それに加え(4)新型コロナウイルスという国際感染症による交流の制約が加わりました。更に、(5)ポスト東西冷戦において期待されたロシアや中国の経済面での自由市場化、政治面での民主化、国民の平等、人権尊重という価値観の接近が一定以上進展せず、幻想であったことが徐々に認識されるようになりました。基本的価値観の相違による交流、協調の制約が新たな課題となっています。
国際協調やグローバリゼーションの維持、促進は今後とも不可欠ですが、上記のような要因により、グローバリゼーションは今後影響を受け、グローバリゼーションの調整期にあることを認識する必要があります。ネパールとの関係においても、新型コロナウイルスの変異株の発生や国際的な感染拡大の状況により当面影響が残る可能性があります。ワクチンの普及や専門治療薬の開発、普及が望まれるところです。
2、2022年はネパールの連邦議会選挙の年
連邦共和国憲法の下で初めて実施された連邦議会選挙(2017年11-12月)に基づき、統一共産党(UML)とネパール共産党毛沢東主義派(旧マオイスト派ダハール議長)の左派勢力が多数を占め、2018年2月に両党が連立しオリ政権(UML)が発足し、同年5月には両党が合同し「ネパール共産党」が発足したことは記憶に新しいところです。しかし5年の任期の中盤になって新型コロナウイルス拡大による経済的停滞と経済対策を巡り両派内で対立すると共に、旧マオイスト派ダハール議長との主導権争いが表面化しました。これを受けてオリ首相が2020年12月20日に連邦議会を解散して以来混迷を続きました。紆余曲折の後、2021年7月17日、中道保守のコングレス党ドウーバ党首が、議会においてオリ政権から離反したネパール共産党毛沢東主義派(ダハール議長)とUMLの一部他の4党の支持を得て、首相に任命されました。ドウーバ首相は、同年12月のコングレス党の党大会において決選投票でS.コイララ元首相を抑え党首に再選されました。
ドウーバ首相の手腕が期待されますが、議員の任期は2022年12月までであるので、それまでに連邦議会選挙が行われることになります。選挙の時期については、3月実施との圧力もありますが、ネパールでは従来議員の間で任期満了まで務めたいという意識が強いこともあり、そのようになる可能性があります。また選挙に臨む姿勢についても、マオイスト派ダハール議長はコングレス党を含む与党4党の連合で選挙に臨むべきとしているのに対し、コングレス党はそれぞれの党として臨むべきとしており、今後の動向が注目されます。しかし与党連合が中道保守から左派までと開きがあることなどから、過半数を取れる政党がでなければ、政治的安定が確保出来ない可能性もあります。いずれにしても2022年は、ネパールは国内政治の年となると共に、オミクロン株の伝染状況によってはコロナ禍の影響が残ることになりますので、2国間の人的交流や対面事業はそれらの状況を見極めつつ進める必要がありそうです。
なお日・ネとの関係では、西郷大使が帰国され、2021年7月に菊田豊大使が赴任されました。菊田大使は外務省南西アジア課長もされていましたので、ご活躍を期待するところです。またネパール側では同年9月27日にナラヤン・カドカ外務大臣が任命され、ラナ大使が同年10月8日に帰国されました。恒例の歓送迎会は時節柄、また菊田大使は前任地からネパールに直行されましたので行えませんでしたが、ラナ大使には当協会より記念品を贈呈し、大変喜んでおられました。新大使の任命が待たれるところです。
皆様のご健勝とご発展をお祈り致します。(2022.1.1.)
公益社団法人日本ネパール協会代表理事/会長
小嶋 光昭