最近のネパール政治情勢(2021年5月)
2020年12月20日、オリ政権内での旧統一共産党(UML)と旧毛沢東主義派(旧マオイスト派ダハール議長)との主導権争いや経済対策への相異から、オリ首相は、バンダリ大統領に要請し、連邦議会下院を解散した。そして下院議員選挙が、2021年4月末~5月上旬に実施されることになっていた。両派は、2018年5月に合体し、ネパール共産党(NCP)を結成し、政権運営をしていた。
しかし下院解散については、与党ネパール共産党(NPC)の中で旧マオイスト派が反対し、市民団体と共に違憲の訴えを起した。これを受けてネパール最高裁は、2月23日、連邦議会下院の解散は違憲とし、下院再開を命じた。更に3月には、2018年5月の旧統一共産党(UML)と旧ネパール共産党毛沢東(旧マオイスト派)により結成されたネパール共産党(NCP)は、既に他の者により登録されており、非合法として解散を命じた。
このような中で、オリ首相は政権維持を図る一方、両派による多数派工作が行われ、ある意味で政界再編的な動きも見られていた。そしてオリ首相は、バンダリ大統領に対し、首相への信任投票を行うため連邦下院議会の開催を求め、これを受け、5月10日、議会においてオリ首相への信任投票が行われた。しかし同首相は、232の出席議員中(定数275議席)93票の賛成を得たものの、マオイスト派も反対に回ったことから、信任投票は否決された。これを受けてバンダリ大統領は、諸政党に対し2つ以上の政党による新政府樹立を申し出るよう求めたが、期限(5月13日)までに申し出が無かったことから、議会で最も得票が多かったオリ首相率いる統一共産党(UML)が政権を担い、6月14日に改めて信任投票を行うこととされた。
これに対しても憲法違反との声があり、市街での抗議活動を含め、不安定化はなお継続するものと予想される。
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